個別の指導者とはこうあるべき

2023年08月24日

  昔から個別指導の塾の先生とはどうあるべきか、という話をほかの講師たちと行います。

さまざまある中で、最近特に感じさせられたことをエピソードして紹介します。

「週1回で成績は上がるのだろうか」

 塾に通うみなさんは誰もが思ったことがあるでしょう。「週1回の80分や90分の授業で成績は上がるのだろうか」という疑問である。

この辺り、勘違いしている方が多くあります。

「●●大学に通っている、または卒業の講師が教える」という謳い文句をよく見かけます。

 だからと言って「その指導力自体に価値がある」と考えるのは少し違う気がします。

そもそも「個別指導の塾」とはどうあるべきなのでしょうか。

 

ケース1 「Aさん:成績上位だが、塾の経験はない」

 Aさんは中学3年生になり、いよいよ高校受験を迎える年となりました。今まで塾に通っていなくても、学校では成績は上位を保っていられる。勉強は自分自身の力で進めていました。学校の定期テストであれば、その範囲を学習すればよく、とにかく与えられた内容をできるようにし、覚えるべきものを覚えていけばよいのです。しかし受験となると少し不安があります。受験問題の教材を本屋さんで見てみると、結構難しい内容が並んでいます。これを独自でやっていくには自信がありません。

 そこで、個別指導の塾に行くことにしました。


 このAさんのケースでは、学力の高い先生がいる、またはベテランの先生がいることが大切です。おそらくAさんは自分で勉強を進めてくることになります。そして塾での授業は質問をして、疑問を解消してくことがメインになるでしょう。 

 Aさんに必要な指導は

 ① 質問になるべく早くこたえられる(どの教科であっても)

 ② 勉強の指針を明確にしてあげる

 受験勉強はそれぞれの目標校と、それぞれの現在の学力に応じて「今何をやるべきか」を示してあげる必要があります。特に成績上位の生徒は、この先3か月の指導方針とやるべきことを明確にし「それをやっていれば大丈夫」という安心感を与えてあげることが必要です。

 また質問が多くなることが予想されます。5教科すべてに対応できる先生がベストでしょう。短い授業の時間でできる限り多くの質問に答えてあげることがAさんにとって大切なことになります。



ケース2「Bくん。やる気はあるが基礎力がない」

 Aさんと同級生のB君は、中学3年生になって「受検に向けて勉強しなきゃ!」という気持ちを強く持つようになりました。しかし、これまでの定期テストでは良い教科でも平均点くらい。これまでもそれほど勉強することもありませんでした。

 何から始めればいいのか、それすらもわからない状態です。目標校も一応あるけど、合格できるかどうか?それもわかりません。

 B君もAさんが塾に入った話を聞いて、塾に入ることに決めました。

 

 B君の状況はAさんとは大きく違います。

 まず塾がやることとしては「B君の学力を知り、1年間でどこまでたどり着けるか」と見極めることです。

 そして授業では解説が中心となり、普段の学習までスケジュールする必要があります。

 B君に必要な指導は

 ① 定期テストで点数を取らせるために必要な学習。学校に合わせた学習

 ② 復習範囲から知識の穴をふさぎ、受験でどこまで点数を取ることができるかの見極め

 ③ 家庭での学習(自習)で何をやるべきか、のスケジューリング

 授業の時間では学校での授業が復習になるくらいのペースで授業を行います。

 そして基礎力は家庭学習で身につけてもらいたいので、そのスケジューリングもします。

 ・授業の時間は(80分だとすると)15分は復習と1週間のスケジュールの説明

 ・65分は予習範囲の解説と演習 

 最初の復習では例えば基礎計算の安定・英単語の暗記、漢字・文章の読解など、各教科の基礎となるべきものがあります。わからないことは説明をして、一週間の自主学習の中で行える状態を作ります。

 そのうえで学校の内容も進めていきます。

 現在の学習と未来に向けての学習を同時に進めていく必要があるのです。



 個別指導の授業は「その時間を教えるだけ」で終わってしまってはいけません。次に塾に来るまでの時間、そして数か月後にあるべき姿に沿ってスケジュールを立てる必要があるのです。

 だからこそ週1回の授業に価値が出てきます。

 逆にその価値がなければ、個別指導の意味はないでしょう。


 これこそが我々個別指導の指導者が常に意識しなければならないことでしょう。